免疫②-免疫学の始まり

福井県坂井市春江町の整体院、セラピストハウスです。

寒くなってきて、感染症が流行りやすい時期になってきましたので、感染症に対する免疫について、数回にわたって説明していこうと思います。

この記事は免疫①の続きになります。

免疫学の始まり

 天然痘は天然痘ウイルスによる感染症で、2000年以上前から非常に強い感染力と死に至る病として人々に恐れられてきました。この脅威に対して、天然痘が強い免疫性を有する事を経験的に知っていた西アジア・インド・中国などでは、天然痘患者の膿を健康な人に塗り、軽度の発症を起こさせて免疫を得るという呪術的な方法が行われていました。
 一方で、18世紀半ば以降、牛の病気である牛痘にかかった者は天然痘に罹患しないという現象に注目したエドワード・ジェンナーが1798年、牛痘接種による天然痘ワクチンを開発しました。このワクチン接種の効果はとても大きく、それ以降は急速に天然痘の流行が消失していきました。このエドワード・ジェンナーは「近代免疫学の父」と呼ばれています。

免疫の仕組みの解明へ

 しかし、ジェンナーの発明した天然痘ワクチンが、どのような仕組みで作用しているのか理解できるようになるには、もう少し時間が必要でした。
 ジェンナーの発見した現象を解析したのが、フランスの生化学者ルイ・パスツールです。弱毒化した微生物を接種することで、免疫を得ることができるという発見は、ワクチンの予防接種という、感染症に対する強力な武器を供給することになりました。ワクチン接種により生体が獲得した免疫の正体が、血液中の「抗体」によるものであるということが、のちにエミール・アドルフ・フォン・ベーリングと北里柴三郎により明らかにされ、「血清学」の幕開けとなりました。
 一方、ロシアの微生物学者イリヤ・イリイチ・メチニコフは、血液中の食細胞の働きと生体防御の働きこそが「免疫」の本質であると考えました。
 彼らの発見は、「体液性免疫」「細胞性免疫」の源流となっています。

免疫の特異性と多様性

 免疫というシステムは、きわめて幻覚は「特異性」を有しています。抗原Aに対して成立した免疫は、抗原Bには反応しません。抗原と特異的に結合する抗体は、免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質で、自然界に存在する無数の抗原に対応できる「多様性」を有しています。生体が今まで出会ったことがない抗原に対して、どのようなメカニズムで特異性をもった抗体をつくるのかについては、いくつかの理論が提唱されました。
 フランク・マクファーレン・バーネット、ニールス・カイ・イェルネらによる「クローン選択説」に基づく免疫的なネットワークによる制御理論は、世利根川進によって抗体の多様性の遺伝子機序が明らかにされたことで、基本的に正しいとされました。利根川は、生体が無数に存在する抗原に対して、どのようなメカニズムで特異的な抗体を準備しているのかを解明したのです。

①生体は、今まで出会ったことのないペスト菌に対して、生まれながらにすでに対ペスト菌の免疫機構を装備していたのか?
②そうではなく、初めて出あったペスト菌に対して、生体が自ら学習して対ペスト菌の免疫機構を新たに作り出したのか?

前回の記事で問いかけたの答えが、①であることがわかります。生体は出会ったことのない相手(抗原)に対してもあらかじめ免疫機構(抗体)を準備しているのです。

免疫の暴走

 免疫の発見は感染症に対して福音となりましたが、免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こる事により、生体にとって好ましくない反応が起こる事もわかってきました(アレルギー反応)。喘息、食事アレルギーのほかにも、自己免疫疾患や免疫不全症候群といった、免疫反応が関連した疾患の存在が明らかとなっています。

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