痛みをとる方法 プラセボ 麻薬の50%にも相当する鎮痛効果
福井県坂井市春江町の整体院セラピストハウスです。
痛みへの対処法として、1回目はプラセボを取り上げたいと思います。
「プラセボ」というとネガティブな印象をお持ちの方からすると、「騙し」のように思われるかもしれませんが、痛みを抑えるためには立派な1つの方法になります。
例えば、何も治療を受けなくても、原因が分かるだけで痛みが和らぐケースがあります。
これには、プラセボが影響しています。
では、プラセボについて説明していこうと思います。
要点だけを説明した後により詳しくプラセボのバックグラウンドについて記載して行こうと思います。
目次
プラセボとは?
効き目ある成分が何も入っていないくすりを服用しても、患者さん自身が、自分が飲んでいるくすりは効き目があると思い込むことで、病気の症状が改善することがあります。この効果をプラセボ効果といいます。
プラセボはどの程度効果あるのか?
プラセボ効果に関する科学的研究を行ったのは、ヘンリー・ビーチャーというハーバード大学の麻酔学教授でした。第2次世界大戦時の野戦病院で負傷兵の救援にあたったビーチャーは、戦後、術後痛の治療においてプラセボ(偽薬)とモルヒネ(実薬)を比較する研究を行いました。
全ての患者さんがモルヒネとプラセボの両方を投与されましたが、半数の患者さんには最初にプラセボが投与され、残り半数の患者さんには最初にモルヒネが投与されました。最初にモルヒネを投与された患者さんは、2度目投与されたプラセボにも非常によく反応しました。最初に投与された薬が効いたという経験によって、患者さんの期待感が作用したと示唆されます。それとは対照的に、最初にプラセボを投与された患者さんは、2度目に投与されたモルヒネにも反応しませんでした。このような報告を契機にプラセボ効果は一般に認められるようになりました。
ビーチャーの研究によると、プラセボによる鎮痛効果は、モルヒネの50%に及ぶとも言われています。
しかし、その効果は著しい個人差が認められています。
有効成分を含んだ薬剤、つまり実薬が効きやすい人に対しては、効きにくい人よりもプラセボの効果は大きく現れます。そして、ノセド効果という副作用も同じように現れます(ノセド効果については後述します)。
プラセボをどう使う?
プラセボを有効に活用する方法はいくつかあります。
痛みを正確にとらえる
痛みをかかえる方の多くは、実際の痛みよりも痛みを強く感じてしまっています。
これは脳の働きとしては自然な事です。
痛みの発生源自体を抑えるためには専門的な知識が必要なのですが、ご自身でできる最大の事は、自分の痛みがどんな感じなのかを理解する事です。
どの部位が | 腰ならば、右側なのか?左側なのか? 側面なのか?背中側なのか? 指で指し示せると良いですね |
どんな感じで | 刺すような痛みなのか?締めつけるような痛みなのか?ビリビリするような感じか? |
どんな時に | 朝起きた時なのか?食後なのか?仕事中なのか?運動中なのか? |
どうすると | 捻ると痛いのか?曲げると痛いのか?押すと痛いのか?動かさないでいると痛いのか? |
どの位の広さで | 痛い部分は、手のひらくらいの広さで痛いのか?指先で指せるくらいの広さか? |
痛みを客観的にとらえられるだけでも、その強さを軽く感じられるようになる事があります。
逆に、痛みをとらえきれないと、どんどん痛みを強く感じていってしまう事もあります。
また、専門家に説明する時も、明確に伝える事ができると、スムーズに、かつ効果的に対処してもらう事ができます。
痛みが少しでも楽になる方法を見つける
プラセボのメカニズムには脳の報酬系が関与していると言われます。
そのため、辛いばかりでなく、楽になる、痛みが軽くなる、といった、成功体験があると、それ以前よりも痛みは軽く感じられる事があります。
その方法は、楽になる姿勢を探すことや、腰を左に捻ると楽になる、または腰を反らさなければ痛くない、といった事を探し、見つけると、成功体験から痛みが楽になっていくことがあります。
「痛くない」と思う
小山哲夫先生の論文”
The subjective experience of pain: Where expectations become reality”からです。
- 「痛くない」と思うことで実際に感じる痛みが減ることを検証した。
- 10 人の被験者
- 信号音の間隔が7秒の時は46℃、15秒の時は48℃、30秒では50℃の刺激を信号音を2回聞かせた直後にふくらはぎに与え、これらを繰り返して、間隔が長いほど痛みが大きいと思い込ませた。続いて15秒で50度の熱を与えて、痛みを評価してもらったところ、30秒の時よりは痛みの評価が低い結果となった。
http://www.pnas.org/content/102/36/12950
まとめ
痛みを抑えるために、プラセボの効果を理解し、意識的に使う事も効果を期待できる。
そのためには、痛みを客観的に捉え、どこが、どのように痛く、またどうすると楽になり、どんな時に楽になるいった事を見極めると効果的です。
ここから先は少し難しい内容を記載しています。
ご興味がある方はお読みください。
プラセボの語源
「プラセボ」という言葉は、ラテン語の”placebo”に由来します。”placebo”とは喜ばせる、楽しませる、満足させるという意味です。
プラセボの定義
17世紀までに、医師たちは作用を持たない薬物の事を「プラセボ」と言うようになり、1811年の「フーパー医学事典」では、ほご現代と同じ定義になり「患者に恩恵を施すというよりは、患者を満足させるために使われる薬の総称」となっています。
現代では「プラセボ」はみかけは実薬と同じなのに、薬としての有効成分が入っていない「偽薬」を意味し、実薬を飲んだと疑わなかった人に薬の効果が表れる現象を「プラセボ効果」と呼びます。
薬に限らず「何か自分に作用が現れる治療が行われた」という情報によって、作用が現れてしまう現象もプラセボ効果に含まれます。
新薬の開発とプラセボ
薬剤の開発中の新薬が認可されるためには、プラセボ検定が義務付けられています。開発中の新薬を投与する医師も、新薬を投与される被検者も、両者ともどの被検者にプラセボを与えるのかがわからないという二重盲検比較試験という方法で、新薬の薬効や副作用を検討します。
プラセボ効果によるノセボ効果
プラセボは一種の暗示効果とも考えられ、効果の現れ方は人や条件により、かなりまちまちだったりします。
また、薬剤による副作用の説明を受けていると、偽薬を飲んでも副作用が出てしまう事があります。このように、プラセボによって望まない副作用が現れることを「ノセボ効果」と言います。
プラセボの作用機序
プラセボの効果は、麻薬性鎮痛薬の拮抗物質であるナロキソンによってプラセボによる鎮痛効果が減少することから、プラセボによる鎮痛にはオピオイド受容体が関与することがわかってきました。内因性ピイオイドだけではなくドーパミン神経系も、プラセボ効果とノセボ効果の両方に関与することがわかってきています。また、プラセボによる鎮痛が生じている時に、視床、体性感覚野、島皮質、前部帯状回の活動が低下するという報告もあります。さらに痛みが起こることを予期している時には、大脳皮質の前頭前野と中脳の活動性が上昇していることも示されています。前頭前野中でも背側前頭前野や前頭眼窩野は、報酬の予期と関連した認知のコントロールによる鎮痛反応に重要な役割を果たしていることから、プラセボにも真の鎮痛効果があることが示唆されているのです。