痛みをとる方法 麻酔薬ー全身麻酔

福井県坂井市春江町の整体院セラピストハウスです。

 

痛みをとる方法の続きです。これまでは、痛みをとる方法プラセボ運動療法関節可動域訓練筋力強化訓練についてまとめてきました。今回からは、薬剤による鎮痛を紹介したいと思います。

 

誤解を招きたくないので説明しておきますが、当院は医療機関ではありませんし、薬剤の扱いもございません。

ですが、お客様から、処方されたお薬について質問される事があります。

病院で聞きなさいよ、とは思うのですが、時間の関係や忘れていた、聞きにくいなどがあるようで、知っているなら教えてという感じで聞かれます。

 

聞かれる機会もあるという事は、まとめておくと何かのお役にたてるのかな、という意味でまとめておきます。

 

決して、当院で薬剤を扱っている訳ではありませんし、説明している内容への責任も負いません。

正しい内容が必要であれば、医師、薬剤師の方などに、ご質問下さいませ。

その点はご了承ください。

 

 

では。

 

麻酔薬について

麻酔薬は、感覚が脳に伝わらないようにして外科手術を可能にする薬物で、鎮痛効果がないものもあります。麻酔には全身麻酔と局所麻酔とがあります。

 

麻酔薬の歴史

古くはハムラビ法典の中に外科手術が行われていたことが記載されています。

紀元前612年に滅亡したアッシリア王国では、頸動脈を圧迫して意識を失わせて手術を行っていました。

紀元後40年頃~90年にいた、薬物学の祖と言われるペダニウス・ディオステリデスは、従軍する時にマンドレークの根をワインで煮込んだ煮汁をもっていき、兵士の足を切断する前に、その煮汁を飲ませて、無痛にして手術を行っていました。

中国では、紀元後200年あたりに、華佗が麻沸散を酒と一緒に飲ませて、開胸手術や頭蓋切開を行っていたことが三国志に書かれています。

イタリアのベネディクト修道院が所蔵する中世の文献には、催眠海綿を使った麻酔が行われていた記載があります。

18世紀のフランツ・アントン・メスメルは「動物磁気理論」を唱えました。患者たちがガラス粉と鉄粉を混入した木製のバケツの周りを取り囲むように座って、意識をバケツに集中させることによって、動物磁気を宇宙から集めるという集団催眠療法を行うようになりました。私(竹中)にはオカルトとしか思えませんが、良い成績を残したので、なにかしら効果的だったようです。メスメルの流れをくんだ、ジェームス・エスデイルは派遣されたカルカッタで、催眠術による250件以上もの外科手術を行い、催眠術を利用すると、痛みだけでなく発赤や膨張までも消失し、手術中の死亡率が5%以下に低下したそうです。

19世紀前半には、手術の際の麻酔にアルコールやアヘン、催眠術も用いられていましたが、麻酔効果が十分ではなかったようです。しかし、アメリカでの笑気麻酔とエーテル麻酔、イギリスでのクロロホルムによる本格的な全身麻酔が19世紀後半に始められるよりも40年以上前に日本では華岡青洲という江戸後期の外科医が世界にさきがけて全身麻酔による手術を行いました。

 

華岡青洲 1804年に世界にさきがけて全身麻酔下での乳癌摘出手術に成功

華岡青洲は江戸後期の外科医です。

医者の家に生まれ、父・直道から教えを受け、その後京都に医学の勉強に行っています。吉増南涯からは漢方を学び、大和見立のもとでオランダのカスパル流外科術を学びました。

また、青洲は三国志にある華佗の麻沸散を使って手術をしていたことを知り、「日本の華佗になりたい」と考えるようになりました。

患者の治療に取り組むかたわら、麻酔薬の研究に打ち込む日々を送りました。研究の結果、1796年に経口全身麻酔薬「通仙散」を完成させました。完成から8年後の1804年に、通仙散を用い、全身麻酔下の乳癌摘出手術を行いました。以降も乳癌手術だけでも153例のほか、舌癌、膀胱結石、脱疽などの数多くの手術が行われました。

しかし、青洲は通仙散の限界を知っていたため、広く麻酔法を伝授することを禁じました。

通仙散は経口性の麻酔薬であるため、効果が出るのに時間がかかるだけでなく、麻酔にかかってしまった後に副作用がでても対処ができないという問題があったためです。その点においては、欧米で発展した吸入麻酔法が優位に立っていたと言えます。

 

笑気ガスによる全身麻酔

亜酸化窒素の別名が笑気ガスで、やや甘味臭のある無色、非刺激性の気体です。麻酔作用は強くありませんが、鎮痛作用があります。笑気ガスによる麻酔は1840年代から行われていましたが、1890年代にイギリスで笑気ガスと酸素を今後する吸入麻酔機が開発されました。笑気を用いた吸入麻酔は今日でも行われていますが、亜酸化窒素は1997年の地球温暖化防止会議において、温室効果ガスの3番目にあげられたこともあって、次第に減ってきています。

 

エーテルによる全身麻酔

1846年にホーレス・ウェルズの弟子であるウィリアム・グリーン・モートンというアメリカの歯科医が全身麻酔に成功したことをきっかけとして、全身麻酔が世界に広まりました。このウィリアム・グリーン・モートンは、「麻酔の父」とも呼ばれています。

エーテルによる全身麻酔の成功の礎には、前述した笑気ガスによる全身麻酔があります。元々、無痛歯科治療に関心があったモートンは、笑気ガスを用いた歯科治療を学びました。そして、同時に、科学者のチャールズ・トーマス・ジャクソンから、エーテルに関する知識を得ました。それらを活かして、モートンは友人にエーテルを用いた無痛歯科治療を行い、成功させました。

 

クロロホルムによる全身麻酔

サスペンスドラマなどで、クロロホルムを染み込ませたハンカチを口元にあてるシーンがありますが、クロロホルムをかいでもすぐに気絶しません。クロロホルムは揮発性が高いので速やかに蒸発し、ハンカチを持っている犯人も一緒にクロロホルムを吸う事になります。クロロホルムが漏れないようにしたマスクを使っても、麻酔がかかるまでに10分程度かかりますが、その前に興奮期があるので、気絶する前に暴れ出す事があるかもしれません。

1847年にエディンバラの産婦人科医のジェームズ・シンプソンがクロロホルムの吸入麻酔による無痛分娩に成功しました。しかし、その成功のわずか3か月後に最初の犠牲者が出ました。大量に吸入すると血圧や呼吸、心拍の低下を引き起こし、重篤な場合は死に至る事があるためで、現在は麻酔薬としても医薬品としても、全く使われていません。

 

現在の全身麻酔

セボフルランとイソフルランが主に使用されています。ほとんどの吸入麻酔薬は標準状態では液体です。エーテルやクロロホルムなどはガーゼの上に滴下する開放点滴法という手法も使われましたが、それ以後に開発された吸入麻酔薬は専用の気化器で揮発させて使用します。しかし、微量であっても手術中に医療従事者が漏れ出る麻酔薬を吸入してしまう事があり、また地球温暖化への悪影響も指摘される事から、完全静脈麻酔が導入されるようになりました。全身麻酔がかかった状態は、正常な状態とは異なります。麻酔科医は患者さんに麻酔をかけるだけではなく、手術の間中、患者の生理状態を管理しているので、安心して手術を受けることができます。